ばったすいみんぐすくーる

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『麒麟の翼』レビュー

◆評  価   7.5点
◆おススメ度  A(さすがは東野圭吾)

原作未読、ドラマ「新参者」も未見。
東野圭吾作品の原作はほとんど読んだことはないが、映像化された映画やドラマは結構見ており、嫌いではないので、鑑賞することとした。
「容疑者Xの献身」のようなストーリーならば、原作やドラマを見ていなくても、問題はないと思ったとおり、特に支障はなかった。
事前にインターネットで登場人物やそのバックボーンを抑えておいたので、なおさら問題なかった。

映画として評価は難しいが、ストーリーについては大満足できる作品に仕上がっている。
さすがは東野圭吾作品だけのことはあり、一つの殺人事件を通して、父と子どもの関係や“真実から目を背けてはいけない”“現実と向き合わなくてはいけない”という強いメッセージを実に見事に織り交ぜて描き出している。
ただ単に、事件の謎を解くだけではなくて、事件の謎を解く過程において、その事件に隠されたテーマを炙り出すという東野圭吾の素晴らしさを体感できた。

個人的に気に入った点は、何組かの関係を並列・対比関係で描かれていることだ。
まずは、三組の親子の関係が並列的に描かれている。
事件を追う加賀刑事と亡くなった父親、殺された被害者とその息子、容疑者とお腹の中にいる子供と恋人との関係が微妙に重なってみえてくる。
家族として近くにいながらも、お互いに何を考えているのか、よく分からない親子・恋人関係。
お互いにお互いのことを強く思っているにも関わらず、素直にお互いの気持ちが交わらない。
将棋・折り鶴・絵馬、不器用な方法でしか伝えることができない、もどかしさが心を打つ。
そのもどかしい方法によって、親が子どもを思う気持ちの強さを感じさせると共に、強いからといってそれほど簡単に通じ合うものではないという難しさをより感じさせる。
また、殺された被害者とその息子の関係だけであれば、特別な親子関係を描いたものにも感じてしまうが、三者の関係を重ねながら描くことによって、特別な親子関係を描いたものではなくて、どの親子関係に当て嵌まる普遍的なメッセージともなった。
さらに、現在の親子関係だけではなくて、将来父親になる者に対してへのメッセージにもなるだろう。

そして、子どもと教師との関係、子どもと父親との関係を対比させて描かれている。
教師も子ども達の将来を考えての行動ではあったが、真実から目を背けることが子ども達の将来を明るく照らすのではなくて、かえって心に影を残して将来が暗く閉ざされてしまっている。
現実を歪曲して隠蔽することによって事を大きくしないことを教えるのではなくて、たとえ間違ったことをしても現実と逃げずに向き合うことの大切さを、命を賭してでも伝えようとする、父親と教師との違いが見事だ。
したがって、本作品においては、教師役は大きな役柄であると思われる。
劇団ひとり自身には罪はないが、彼をこの役柄にキャスティングすることはいかがなものかと思う。
事実を隠蔽するという事柄についても、水泳の事故だけではなくて、真相を語れない被疑者を本事件の犯人として認定しようとする、真相を語れない責任者に労災隠しの張本人としてしまうといった並列関係がみられる。
事実を隠蔽したことにより、娘は自殺未遂をし、恋人は中絶を悩むといった間接的・波及的な悲劇へと繋がっている。

ラストにおいても、加賀刑事、殺された被害者の息子、被疑者の恋人を並列的に描くことによって、それぞれの者の気持ちをより深く、より重く感じることができる。
原作を読んでいないので加賀親子に何があったのかは分からないが、今回の事件を通して加賀自身も自分の父親と向き合うことができたのではないか。
殺された被害者の息子と友人、被疑者の恋人とその生まれてくる子どもも、それぞれが現実と向き合って、前を向いて歩いていける素晴らしいラストであった。
暗くて悲惨な殺人事件を扱いながら、このような前向きな感動作品にしてしまうところが東野圭吾の素晴らしさだ。

「容疑者Xの献身」同様に、東野圭吾作品は主役の存在が“事件”によって目立たなくなる傾向にあるが、今回もやや目立たないところはありながら、加賀と父親の関係を感じさせるものであるため、加賀というキャラクターの深みは増したと思われる。
しかしながら、本事件に対する加賀が感じた“ひっかかり”に対して、観ていても共感しにくいところがあるので、その辺りについては改善の余地があるのかもしれない。
何を思っているのか、何を追っているのか、加賀自身もよく分かっていなかったのかもしれないが、“被疑者が人を殺すはずがない”という直感または確信のようなものを観客にも感じ取れるようになっていればよかった。
真犯人が別にいるということを、あまりオープンにすることも興ざめとなるところはあるので、バランスが難しいところではあるが、加賀の気持ちをもっと感じ取りたかったところだ。
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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

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